スポーツとアイドル文化の交差点近年、スポーツの世界で「推し」という言葉がよく使われるようになっています。もともとはアイドルやアニメなどのファン文化で使われていたこの言葉が、アスリートに向けられるようになってきました。応援する理由は勝敗だけでなく、その人の人柄や努力に共感したからという理由が多くなっています。そうした思いを込めて、選手を 「推す」という行動が定着しつつあります。特に若い世代のファンの間では、スポーツの楽しみ方が変化しています。試合をただ観るのではなく、選手ひとりひとりの背景やストーリーに共感し、長く応援を続ける。そうした応援のあり方は、長続きする魅力につながります。SNSで近づくアスリートとファンの距離SNSの普及によって、アスリートとファンの距離は確実に縮まりました。試合中の姿だけでなく、普段の表情や思いまでが伝わるようになり、ファンは選手をより身近に感じるようになっています。日体大・棒高跳びの小林美月選手は、SNSで練習風景や日常のつぶやきを発信し、フォロワーは2.7万人にのぼります。中高生から「元気をもらった」「憧れです」とDMが届くほど、ファンとの距離は近くなっています 。彼女は競技力だけでなく、人間性やストーリーで応援される存在として支持を得ています。このように、SNSを通じて「プレーだけでない選手像」が伝わることで、ファンの共感の幅が広がっていきます。“推し活”が生み出す応援のかたちと経済効果推しを応援する行動は、気持ちを示すだけでなく、具体的な経済価値として表れます。Jリーグ・浦和レッズでは、選手ごとのアクリルスタンドや誕生日グッズ、選手のサイン入り福袋といった“推し活”向けアイテムを販売し、人気商品はすぐに完売しています。SNSでは「買えた!」「飾ったよ」という声が多く、ファン同士の共有や安心感が生まれています。また、Jリーグの決算報告によれば浦和レッズは2023年度において約16億円の物販による売り上げを記録し、これは全Jリーグクラブで最高の値となっています。こうした応援の形は、チーム運営にも好影響を与えています。選手中心の限定配信や特典イベントの開催など、ファンの“推し意識”を満たす施策を通じて、ブランドへの愛着が育まれているのです。Web3技術が広げる応援の証としての体験近年では、ファンの応援行動を可視化し、デジタル上で“形”として残す仕組みも登場しています。たとえばラグビーチーム・浦安D-Rocksでは、博報堂キースリーとNTT Digitalが提供する「FAN’s STAMP」というNFT型ロイヤルティプログラムを導入しました。ファンが試合への来場やグッズ購入などの行動を通じて、“名シーン”のNFTを獲得できる仕組みで、応援そのものがコレクション可能な体験へと進化しています。このように、Web3技術は「推しかつ」の行動をデジタル上に刻み、経済的にも価値ある資産として扱える時代を拓きつつあります。ファンは応援した証を記録として所有し、クラブや選手とより深い関係を築けるようになっているのです。これからのアスリートに求められるものアスリートとして結果を出すことはもちろん大切です。しかし今後は、SNSを使って自らの姿や思いを発信する力が、一段と重要になります。発信を通して共感や対話を生み出すことで、ファンとの関係が強くなります。これは単なる自己表現ではなく、応援の原動力になります。また、SNSによって発生する応援は、感情だけでなく経済的価値にもなっています。NextStairsのようなサービスは、ファンの応援行動や熱量を数値として見える化し、価値として換算できます。これにより、応援行動が選手やチームの強みとして具体的に伝えられるようになります。応援されることで評価される時代において、選手やクラブは「何を伝えるか」「どのように届けるか」をしっかり考える必要があります。自分の魅力を自分の言葉で伝えていく。その積み重ねこそが、新しいファンとの出会いと応援の広がりに直結します。(参考: 小林美月選手 SNS 浦和レッズ 商品 浦和レッズ 福袋 2023年度 J1 クラブ決算一覧 - Jリーグ 博報堂キースリー NTT Digital スポーツファン向けNFTサービス「FAN’s STAMP」株式会社NextStairs アスリートSNS活用術 )<文>野口周(Spoship編集部)