【この記事に登場する人】宇野カルロス冠章(うの・かるろす・かんしょう)。マサチューセッツ州立大学アムハースト校スポーツマネジメント学部卒、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修了(研究テーマ「WBCにおけるスポンサーシップフィット」)。電通・Bloomberg・MLB・ラプソード・Meta・PwCなどにて、経営企画(支社設立・中期計画)・ビジネス開発(アライアンス・新規事業)・マーケティング(オンライン・オフライン)に従事。いまや国外リーグで日本人アスリートが活躍するのは当たり前で、海外に飛躍の機会を求める人が増えているのはビジネスの世界でも同様だ。宇野さんは野球界ではおなじみの弾道測定分析機器「ラプソード」を製造販売するラプソード社のほか、電通、MLB、Metaなどスポーツビジネスを含め幅広い業種で世界を舞台に活躍し、2024年にスポーツマーケティングに特化する株式会社NextStairsにジョイン。その想いを聞いた。-宇野さんとスポーツとの関係を教えてください。スポーツ記者をしていた父の仕事の関係もあり、幼いころからスポーツは好きなんです。母親の仕事の都合で6歳のときに中国から日本に引っ越してきたのですが、当然日本語はほとんど話せず、スポーツは言葉の壁を越える手助けをしてくれました。当時はスポーツを介してともだちをつくっていた記憶があります。日本では学生時代バスケットボールや野球を部活などでやっていました。現在は毎日筋トレ・有酸素するなどスポーツが文字通りLifetime Sportになっています。スポーツマネジメントの学問の分野でトップ校だったアメリカのマサチューセッツ州立大学に入学し、スポーツをビジネスとして捉えるアカデミックな領域でスポーツと関わるようになりました。-大学でスポーツマネジメントを修めたあとビジネスの世界に入られたんですか。スポーツマネジメントの学部の中でも、経済的な成功に有利だろうと思い私はファイナンスに注力し、米系の金融機関に就職しました。ところがその直後リーマンショックが起こり退職し、日本でもようやくスポーツをビジネスとしてアカデミックな領域が誕生したことを契機に、日本のスポーツ科学の最先端であった早稲田大学の大学院に進学することにしました。大学院では、北京に拠点を置くスポーツ系の広告代理店やMLBジャパンでの就業経験などから、スポーツイベントと協賛企業のスポンサーシップフィットに関する研究を行い、産学両面で貴重な経験をさせていただきました。-早稲田の大学院を出られた後のキャリアについて教えてください。当時から国内でスポーツビジネスの中心にいた電通の中で、プロジェクトの一部でスポーツ分野に携わることもできましたが、データを活用したコンサルティング業務が主だったため、10年後の転職先になったコンサルティング会社の転職に繋がったのかもしれません。その後、シドニー・ドバイと経た後に、シンガポール在住に、野球・ソフトボール・ゴルフなどのデータトラッキング機器メーカーであるラプソードから誘われ、米国以外のビジネスのゼロイチ、ならびに日本法人立ち上げを任されることになりました。「日本市場を熟知」「英語・日本語バイリンガル」、「産学両面からスポーツマネジメントに精通」が代表からのヘッドハウンティングの理由だったようです。アジア太平洋・欧州(特に日本)での普及に向け、ビジネスのアライアンス、広告代理店様とのイベントの提案・企画・アクティベーション、SNSのオフラインイベントとの連動・オーガニック運用、データマネジメント、プロ野球チームからアマチュアの強豪クラブ・大学・高校・個人までを行脚し、市場開拓と顧客満足度の向上に、1人でシンガポール本社・アメリカ・トルコ支社と連携しながらの日々を送りました。-業界も国境も越えとてもユニークなキャリアを積まれていますが、意識してきたことや軸としてきたことなどはありますか?「スポーツ」「海外」「最先端技術」と向き合うことの3つが大きな軸で、それぞれに関係する、もしくは周辺領域にある仕事を選んできました。直近のラプソード・Meta・PwCはまさにスポーツを軸に考えた転職でした。あとは興味のおもむくままですね(笑)ラプソードで日本法人を立ち上げ達成感を得てしまったので、一度スポーツの現場を離れて俯瞰して業界を見ようと、アドテクの領域にGAFAのMetaへ飛び込み、そのままメタバースに興味を持ち、その後ブロックチェーン活用を業界横断的に推進できるPwCコンサルティングで産(学)官連携のプロジェクトを回していました。幅広い業界でそれぞれ当時最先端の環境で働くことができたので、今はまた原点に返り、スポーツ、海外、最先端技術という軸にしています。-多様なご経験を踏まえ今重視するテーマや課題感はありますか?大学院での恩師や先輩後輩との関係を大切にアカデミックと国内外・業界問わずビジネスの両分野に橋渡しのような役割ができればと考えています。アカデミックでは、大学、大学院で日米最先端の環境でスポーツビジネスを学び、ビジネスの世界では大手企業からスタートアップまで、事業者から代理店までオセアニア、北アフリカ・中近東、アジア(特に極東アジア、東南アジア)での経験を積みました。手前みそながらめずらしいバックグラウンドを持っていると思います。産学官連携がより進むような、お手伝いができればと考えています。また、国内外にも多くこれまで在籍した会社でご一緒した仲間がいるので、知識や経験だけでなく、NextStairsの提供価値を軸に、人とひとの輪・交流の幅を拡げていければいいですね。-スポーツマーケティングに特化するNextStairsに2024年にジョインされました。その想いや今後の展望を教えてください。NextStairsはスポーツの価値を客観的な指標でもって定量化する「BrandInsight」というプロダクトを主軸サービスとしていますが、これはまさに私が研究してきたスポンサーシップフィットに感じる課題を解決するものだと感じています。スポーツの価値はビジネスの領域で広告価値などをもとに算出されることが多いですが、アカデミックの領域で体系化をしていくべきだと考えています。日本国としてのスポーツ振興をする上で、国や各自治体、スポーツ協会・リーグ・チーム・選手、スポンサー企業様の価値を最大化する健全なエコシステムの構築に「BrandInsight」が寄与すると信じています。まだNextStairsは若い企業ではあるが、一番難しい0から1のフェーズを越え、資金調達も2,500万円以上を達成したことからもステークホルダーの皆様に、今後の1から10のビジネス拡大を期待して頂ければと思います。そのため、社内外で良い議論を重ね、プロダクト、サービス改善を続けていくと同時に、そうしたスポーツ業界、社会全体の発展を支える縁、その輪を広げられるよう力を尽くしていきたいです。<取材・文>佐藤大輔(Spoship編集部)【関連リンク】宇野カルロス冠章さん公式X