こんにちは!佐藤です。今回は、株式会社Smart相談室が「アスリート応援プロジェクト」でサポートしているプロアーチャーの青木辰子さんと、プロジェクトにご協力いただいているSmart相談室カウンセラーの岡安一正さんに、アスリートのパフォーマンスとメンタルについてお話を伺いました。この記事は株式会社Smart相談室との協力により作成されました。オリジナル記事はこちらをご確認ください。【この記事に登場する人】青木 辰子(あおき・たつこ)プロアーチャー。長野県出身。【来歴】1983年 障害者スキー競技を始める1988年 インスブルックパラリンピックに出場し7位入賞 1990年 スキートレーニング中の事故により脊髄を損傷。胸から下の体幹機能麻痺となり、座位クラスへ転向 1998年 長野パラリンピックに座位カテゴリーで出場。回転競技で銀メダルを獲得。 2002年 ソルトレイクパラリンピックに出場。スパー大回転で5位入賞。 2006年 トリノパラリンピックに出場。銅メダルを獲得。 2010年 バンクーバーパラリンピックに出場。現在はアーチェリーへ競技を変更しロサンゼルスパラリンピック出場を目指す。*アスリート応援プロジェクトとは 頑張る人たちをSmart相談室によってサポートしたいとの想いから発足したプロジェクト。 特に、日本スポーツ界が課題として抱えている、現役アスリートのメンタルヘルス対策やキャリア支援、引退アスリートのセカンドキャリア支援を、カウンセリングを通して積極的に推進する新しい取り組みです。支援アスリートに対して「Smart相談室」のカウンセラー相談を無償で提供しています。詳細はこちら「アスリート応援プロジェクト」を求めていた!(佐藤)青木さん、今日はよろしくお願いします!さっそくですが、「アスリート応援プロジェクト」をご利用いただいたきっかけはなんですか?(青木さん)以前からの知り合いであるカウンセラーの岡安さんからご紹介いただいたことがきっかけです。メンタルを整える方法として、友人とおしゃべりしたり愚痴を言い合ったりなどはしていたのですが、冷静に建設的な話をできる場を長く探していて、今回「これだ」と思い支援いただくようになりました。 メンタルコーチというよりも、身近なささいなことを話す場がほしかったんですよね。細かな気持ちの変化だったり、練習環境の悩みだったりをフランクに話せるような。現在は月一回の頻度で岡安さんと面談を行い、いまお話ししたような内容を聞いてもらっています。「アスリート応援プロジェクト」で提供いただく機会はまさに求めていたものでした。(佐藤)岡安さんとはお知り合いになってから長いとのことですが、青木さんから見て岡安さんはどのような方ですか?(青木さん)昔からそうですが、静かに横で見守ってくれて、そっとサポートしてくださる方です。私がものごとに熱中しやすい性格なのに対し岡安さんは冷静な方です。岡安さんご自身はアーチェリーの競技経験がおありではないのですが、私の主観的な話から考えを整理しパフォーマンス改善につながる気づきを与えてくれます。(佐藤)反対に岡安さんにお聞きしますが、青木さんはどのような方ですか?(岡安さん)長いお付き合いですが私の方が年下なので可愛がっていただきました。ご自身の考えをしっかり持っていて、白黒はっきりつけられるタイプの方だと思います。パラリンピックのメダリストですから、アスリートとしての実績がすごい分なかなか相談に乗れる相手が少ないのかなと感じています。付き合いが長いからこそわかる青木さんの痛みや苦しみがあると思っているので、私がより青木さんの気持ちを楽にするお手伝いをしたいです。(佐藤)岡安さんご自身はアーチェリーの競技経験はないですが、どのように青木さんをサポートされているんですか?(岡安さん)私にはアーチェリーの専門的なことはわかりません。教えることは全然できないんです。壁打ち相手になることで青木さんと視点を共有し、想像するなかで気づいたことや違和感を青木さんに投げかけると青木さんから答えが出る、というイメージです。(青木さん)言葉にできないということは、理解できてないということです。岡安さんへ自分の考えや感覚を説明すると、岡安さんが余計な部分をそぎ落としシンプルにして投げ返してくれます。そのような過程を経て、心理的な状態や技術的な課題について、本当の意味での理解を深めていくんです。アーチェリー選手として初のパラリンピックへ(佐藤)スキー選手としてはメダルを獲得されるなど華々しいご経歴がありますが、アーチェリー選手としては初のパラリンピック出場を目指されています。2028年ロサンゼルスパラリンピックを目指すなか現在抱えている課題はなんですか?(青木さん)アーチェリーを競技として始めて10年になりますが、故障などが重なり思ったようなトレーニングを積むことができませんでした。昨年から新たなコーチに指導を受けるようになり、現在は前向きにトレーニングに取り組むことができています。 文字通りゼロから、弦の持ち方から変えていただきました。技術的には課題が多いですが、コーチは世界トップレベルのアスリートなので信じてついていくだけだと腹をくくることができています。また、アーチェリーはメンタルとフィジカルの距離が近い特殊な競技ですが、そのコーチは経験談を交えてメンタル的なサポートもしてくださるので心強いです。(佐藤)充実した環境にあるということですね。日々どのようなスケジュールを過ごされているんですか?(青木さん)週1日の休養日と、講演会などお仕事の日を除き毎日射場で練習しています。アーチェリーは鋭敏な感覚を必要とするスポーツなので2,3日休んだら的に当たらなくなると言われています。 昨年、比較的自宅から近い距離に新しい射場ができました。それまでの練習場よりもかなり通うのが楽になり、設備面でも世界大会を開催できる規格の立派な射場で世界中からトップ選手がやってきます。先ほどお話ししたコーチもこの新たな射場がご縁です。不安なくトレーニングに向き合うことができています。(佐藤)ストイックな日々ですね。故障などがあり思うような結果が出ないなかで10年取り組み続けてこられたのにはなにか原動力があるんでしょうか?(青木さん)元来負けず嫌いで、自分をあきらめたくないという気持ちが強い性格なんです。加えて、私は人にとても恵まれてるんですよね。肩の手術など正直辞めようと思ったタイミングは何度かあったんですが、その度に選手仲間から助言をもらって明らかに技術的な改善が見られたり、新しい射場ができ恵まれた練習環境と同時に世界レベルのコーチと出会うことになったり。ゾーンのその先(佐藤)アーチェリーの前はスキー選手として活躍されていました。大きく異なる競技ですがなぜアーチェリーを始められたんですか?(青木さん)実はスキー選手であった約20年前に一度アーチェリーを遊びで経験したんです。そのときとても楽しくて。ただ、当時はスキーに夢中だったので「いつかやりたいな」と心にとどめていました。10年前に「スキーをやり切った」と感じて「次はアーチェリーだ」と自然と思えました。 アーチェリーはメンタルとフィジカルの接点が深い競技です。スキー選手時代からフィジカルの強さには自信があったんですが、ここ一番で優勝を逃してしまうなどメンタル的な弱さが課題だと感じていた私にとってアスリート生活の集大成としてうってつけの競技でした。メンタル的な成長を追求してみたかったんですよね。(佐藤)メンタル的な成長が青木さんにとって長い間課題で、大きなテーマだったんですね。(青木さん)そうですね。F1が昔から大好きなんですが、F1の選手は集中力が極限まで高まった状態、いわゆる「ゾーン」をある程度コントロールできると言われているんです。文字通り命をかけた勝負が繰り広げられる究極の世界のなかで感覚が洗練されていくのでしょう。私もスキー選手時代に何回かゾーンに入った経験があるのですが、そのときの情景、快感は鮮明に記憶に残っています。その状態にまた近づきたいなという願望もありますし、ゾーンがどのようなものなのか知りたいという気持ちもあります。 また、私にとってスポーツは自分を成長させてくれる場だと思っています。もちろん良い競技成績を残すことは大事ですが、その目標に向かう道中に立ちはだかる課題を1つずつクリアしていく過程が自分を人間的に成長させてくれ、それ自体が私に取って大きな意味を持つんです。 私の憧れの人にダイアナ・ゴールデンという2001年に亡くなった障害者スキーの選手がいます。彼女はパラリンピックの金メダリストなのですが、そのアスリートとしてのパフォーマンスだけでなく、堂々としたふるまい、姿勢がかっこよくて、私にとってずっと憧れの人です。私がスキーに夢中になったきっかけとなった方です。人間的な成長の先で彼女に近づくことができたらいいなと思っています。専門家と話すチャンス(佐藤)カウンセラーである岡安さんにお聞きします。青木さんのようなアスリートが、Smart相談室のようなサービスを使い、それを発信することはどのような意味がありますか?(岡安さん)アスリートの方は1人で悩みを抱え込んでしまいがちです。青木さんのようなトップアスリートも利用されていると知っていただき、広くアスリートがメンタル的なサポートを受けやすい社会になってほしいです。 また、トップアスリートでも日々悩み、サポートを受けているのだと一般の方にも広く知っていただけると、悩みがあれば早めに打ち明けるとか、だれかに話してモヤモヤを解消するなどが当たり前になり、もっと住みやすい世界になるのではないかなと思っています。(佐藤)最後に、同じアスリートの方々に「アスリート応援プロジェクト」をおススメできる点があれば教えていただけますか?(青木さん)メンタルの専門家の方から建設的で冷静な言葉を投げかけていただき、同時に私の内にある言葉を引き出していただける機会はとても貴重です。さらに、「アスリート応援プロジェクト」ではそれを無料で受けることができるため、経済的な基盤が強くないアスリートにとってこの上なくありがたいことです。 メンタル的な部分に課題を感じて相談していると、話をしているうちにその課題の原因はフィジカルにあったとわかることもあります。アスリートにとってメンタルの専門家の方に話をするのはとても大きなチャンスになると思います。(佐藤)トップアスリートとしてメンタルと向き合い続けてきた青木さんならではの貴重なお話をお聞きできました。今後も応援しています!本日はありがとうございました!【関連リンク】青木辰子さんへのお問い合わせ◼️Smart相談室へのお問い合わせ・取材依頼は以下よりご連絡ください。・お問い合わせフォーム:https://smart-sou.co.jp/contact・メールアドレス:pr@smart-sou.co.jp