【この記事に登場する人】中島大輔(なかしま・だいすけ)。2008年慶應義塾大学医学部卒業。2019年慶應義塾大学医学研究科修了。大学院在籍時に汗中乳酸をリアルタイムに計測可能な技術に出会い、2018年同技術の展開を行う株式会社グレースイメージングを創業。-スポーツ領域でのビジネスに難しさはありますか?私たちが参入している領域は、スポーツコンディショニング領域と呼ばれており、ターゲット選定と価格設定が難しいと感じています。例えば、弊社のサービスは、部活動での活用方法を相談いただくことが多いのですが、学生の方々にとって月数千円のサービスを継続利用するハードルは高いはず。そんななか、さいたまマラソンの「汗乳酸測定によるマラソンカウンセリング」のプロジェクトは、潜在顧客の反応を直に得ることができ、貴重な機会になりました。今後は、自身の趣味に比較的時間とお金を使える40~50代の方々をターゲットにしてサービスを展開させていこうと考えています。-具体的にどのような展開を考えていますか?フィットネスクラブ事業者様にクラブ会員向けの汗乳酸測定サービスを提供しようと考えています。それにより、フィットネスクラブの利用者様がフィジカルパフォーマンスやコンディションの把握、効果的なトレーニングの決定などに生かすことができます。また、今後はフィットネスクラブ事業者様などを対象に同システムの導入支援を行っていきます。さいたまマラソンでの実績から同程度の価格帯でも、運動に関し興味度が高いヘビー層のクラブ会員には需要は十分にあると考えています。-さいたまマラソンはじめ複数のスポーツ大会、関連企業とプロジェクトを行っています。きっかけは何だったのでしょうか?創業当初から大学内のスポーツの研究部からお声掛けいただいており、その関係からスポーツ業界の方々を紹介いただくことは多く、いくつかビジネスにつながりそうなお話をいただいていました。しかし、大学外の研究機関所属ではない方々からは「その数値にどんな意味があるの?」という問いかけをいただくことが多く、私たちの技術を利用いただくための説得力が足りない状況でした。説得力を持たせるために、地道に研究を進め、アカデミックな実績を一つひとつ積み重ねてきました。-昨年大型の資金調達に成功されました。市場に認められつつあると感じていますか?まだまだです。スポーツコンディショニング領域は資金調達を行なっても一気にスケールさせるのは難しいと考えています。地道に一つひとつ結果を残し、ステークホルダーと協力を得ながら5年10年のスパンで成長させていくつもりです。スポーツ産業の持つポテンシャルは大きいと考えています。欧米においてスポーツは大きな産業になっています。日本で実績を積み、将来的に欧米のプロアスリートにサービス提供していくことができれば、サービスの対価としてより高い評価を得ることができると考えています。-今後スポーツチームとどのような取り組みを行いたいですか?今までマラソン、自転車競技、水泳などで共同プロジェクトを行ってきました。そのなかで、シンプルな動きの個人競技の方が有効なデータを計測しやすく、私たちのサービスと相性が良いと感じています。直近ですと、スポーツに関係するチームやアスリートにご協力いただき、1年スパンでデータを追いかけるプロジェクトを行いたいです。合宿や試合前後で測定を行い、コンディショニングのヒアリングを行えたらベストですね。長い時間をかけて精緻なデータを取得することで、私たちが提供する「汗で疲労度を測る」というサービスの価値を深堀りできると考えています。私たちの持つ技術は世界初のものですので、初めての試みばかりです。大切に事業として成長させていきたい半面、ビジネスとして大きな夢も描いていきたいですし、私たちだけではなく業界全体が盛り上がってくると嬉しいです。<取材・文>佐藤大輔(Spoship編集部)【関連リンク】株式会社グレースイメージング 公式HP